もったいない映画『南極料理人』…なぜか愛あるダメ出しに。

 

第38次隊南極地域観測隊に調理担当として参加した、料理人であり著作家の西村淳の『面白南極料理人(新潮文庫)』と『面白南極料理人 笑う食卓(新潮文庫)』を原作に撮られた日本映画。

 

南極料理人

 

タイトル:『南極料理人』

監督:  沖田修一

主演:  堺雅人
     生瀬勝久
     きたろう
     高良健吾
     豊原功補

公開年: 2009年8月8日

国:   日本

上映時間:125分

ジャンル:ヒューマンドラマ・コメディ

 

 

感想を最初に書いてしまうと!!

 

もったいない!…本当にもったいない……。

 

俳優さんがいい。

誇張されてるとはいえ、極寒の単なる居住地(定住集落)とは違う、隔絶された「駐在施設」で一年以上。同じ暮らしと研究ばかりに明け暮れてると、陥るかもしれない人の心理とか、滑稽過ぎるけどまあまあ…そんな心理もあるんだろう。

 

料理は日常のメニューながら、美味しそうだし、何より隊員たちに食べてもらうためにせっせと作る様子も素晴らしい。


空と雪原だけの景色もきれいだし、何より、原作、…まだ読んでないんだけど、たぶん、実体験と、隊員たちの友情や心境、ご飯にまつわる色々なエピソードがてんこ盛りなのでは、と想像する。

 

 

なんだけど、映画はどうしても冷めた目で見てしまった。

 

あらすじ

時は1997年。舞台は南極大陸のなかでも、標高3,810メートル、平均気温マイナス54度という、生物が生きられないほど過酷な場所にある「ドームふじ基地」。
ウイルスさえ存在しないこの孤独な基地で、観測隊員として派遣された8人の男性が、約1年間にわたる共同生活を送る。

 

主人公の西村(堺雅人)は、海上保安庁から派遣された調理担当。彼は、自分と7人の個性豊かな隊員たちのために、毎日趣向を凝らした料理を作る。

 

親しい者たちから離れて、ここに駐在する孤独な専門職者たちは、自分の仕事を果たしつつも、それ以上にここでの生活を維持するための仕事に注力しなければならない。

外へ一歩出れば確実に死が待ち受ける世界の中、狭い居住空間でだんだんとストレスを溜める。

 

長い内向きの生活が変なこだわりを生み、それを深刻感を入れずにコメディタッチで描いている。そんな中、唯一の楽しみとしての「食」にまつわる悲喜こもごもを描いた、日常映画。

 

 

 

忖度なしの感想(ここからネタバレです!)

 

食べるシーンも作るシーンもたくさんある。西村(堺雅人)の懸命な表情もあるけど、真摯に丁寧に作ってる。

その反面、メンバーは食べ方が少々汚い。食事の音がちょっと不快。食器の音ならいいけど、汁物、お茶、食事時の音をことさら入れてる。

 

ついでに、声が小さい。

邦画あるあるかもしれないけど、今回は効果音が殆ど無い静かな映画…音量を大きくすることで対処した。そのうち慣れた。

 

無遠慮に調味料をバンバン使うのを見て、西村は「(あ、それ、マヨネーズ無しで大丈夫なんだけど…)」という顔をする。

そんな場面が本当にたくさんある。

 

そして誰も、いつまでも「いただきます」「ごちそうさま」を言わない。あんなにがっついてむしゃむしゃ食べてるはずなのに。

普通なら、「うまっ!」「これどうやって作ったの?」それくらい、無いかな?いくら家族同然の関係になったって。

ここが人間としてはちょっと異常で、これはもしかしたら演出上のものかも、と思った。そう感じたのが、まず映画の冒頭。

 

感謝されるのは調理担当くらいだ、という変な不公平感がもしあるならまだしも、まずはこんな環境で食べるものがあること自体…まず食材に感謝じゃない?!

 

……これは、わざとだな……。

 

 

個別のドタバタは、もう省こう。

 

 

西村を困らせるばかりな男たちだったが、最後あたりになって暴れ出す。そうして、西村はとうとう、参って寝込んでしまった。

 

調理担当が寝込んでしまったらどうなる?

当然ながら、皆心を入れ替えるんですわ…そうして最後。

 

誇張でも何でもない、普通の食事シーン。

「頂きます!」

みんなして普通に手を合わせる。

 

あ、映画の最後なんだな…。

 

隊員たちの家族についても触れるけど、主人公西村の家族の反応もちょっと違和感。いきなり南極への勤務となり、家族に相談をするが、妻も娘もげらげら爆笑。

なんか、頑張ってる父、その悲哀(プラスあきらめ…だけど愛は感じてるよ)。

みたいな構図をわざと作りたいのかな?

そうして、いなくなって初めて大切さがわかる、的な。

全体を通してそういう感覚があった。

 

というわけで、多少なりとも起承転結があるかと思ったけど、無い。

映画:「ザ・日常…南極編」

最後の一言(いただきます)を際立たせるために、あえて道中の礼儀を空っぽにしたという、かなり極端な引き算の構成…に見えた。

 

あともう一つダメ出し。

雪原にかき氷シロップで大々的に砂絵のような巨大な絵を描き、それをつついて食べるシーンがあるけど、あれも、溶けない世界でやっていいのかな?

しかも、南極でしょう?自分の庭じゃないんだよ。

無邪気でするには度を越していませんか?

 

このように突っ込みばかり書いてきて今、不思議なことが起こったんだけど。

こんな映画ですが!ちょっと観てみませんか?

というか、もう一回観てもいいよ、私。と思った。

あえて知ってから観ると、意外にほっこりする…かもしれない。

本も読みたい。

 

 

あと、最初にもったいないと言った理由だけど、

これだけの名優が揃い、素晴らしい原作(おそらくそうだ!)があるのだから、コメディにストイックに全振りしてしまわずに、もうちょっと極限状態での精神的な動きや、そこを繋ぎ止める『食』というインフラの重みがちょっとでも垣間見えるような映画だといいのにな、と思った。彼らの食は「命の命綱」であり、「心の命綱」なんだから。

(よし、キマった)

 

 

 

 

 

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