一作目は昔スカパーで観たので、今回は二作目の「テキサス・チェーンソー ビギニング」を観てみた。
前情報では、あのソウよりも、テリファーよりもグロ上級者向けだと聞いていたから、本当は躊躇していた。
確かに衝撃的だったけれど、実際は恐怖の合間に意外と色々考えさせられた。
ちなみに、リメイク元となった「悪魔のいけにえ」はまだ観てない。
※注意:本記事は物語の結末や犯人の出自など、特に後半の解説は重大なネタバレを含みます。未視聴の方は、ぜひ映画を観た後にお読みいただくことを強くおすすめします。あと、ブログタイトルは救いがありそうな言い方で書いてますが、基本、救いはまったくありません。
タイトル:『テキサス・チェーンソー ビギニング』
(原題: The Texas Chainsaw Massacre: The Beginning)
監督: ジョナサン・リーベスマン
主演: (下に記載)
公開年: 2006年10月6日
国: アメリカ合衆国
上映時間:92分(アマゾンでは96分)
ジャンル:スプラッター・ホラー
あらすじ
舞台は1969年、テキサス州。食肉処理工場で働く異形の風貌を持った男、トーマス・ヒューイット(後のレザーフェイス)は、工場の閉鎖を告げられた怒りから上司を惨殺する。
ちょうどその頃、ベトナム戦争への徴兵を控えた若者2人とその恋人たちは、最後の自由を謳歌するためにドライブ旅行へ出かけていた。
道中で事故に見舞われた若者たちの前に現れたのは、保安官の制服を着た男・ホイトだった。しかし、彼は本物の保安官(ウィンストン・ホイト)を殺害してなりすましていた。助けを求めた若者たちは、ホイトの手によって、あの「衝撃の家」へと連行されてしまう。
家では、殺人鬼トーマスと狂った家族たちが手ぐすね引いて待っていた。ベトナム戦争という時代の影、食肉文化、そして一家の異常な絆が交錯する中、若者たちは一人ずつ「獲物」として処理されていく。
命からがら逃げ出そうとするクリッシーだが、トーマスのチェーンソーからは逃げ切れなかった。若者たちは全滅し、一家の凄惨な犯行は闇に葬られる。
ーキャストー
〇 若者四人
クリッシー(ジョーダナ・ブリュースター):本作のヒロイン。エリックの恋人。
エリック(マット・ボマー):クリッシーの恋人で、ベトナム戦争への再招集を控えた元海兵隊員。
ディーン(テイラー・ハンドリー):エリックの弟。徴兵を拒否してメキシコへ逃亡しようと考えている。
ベイリー(ディオーラ・ベアード):ディーンの恋人。4人でドライブ中に事件に巻き込まれる。
〇 ヒューイット家
チャーリー・ヒューイット(R・リー・アーメイ):ヒューイット家の家長。保安官のホイトを殺害し成り替わってホイトと呼ばせる。若者たちを追い詰め、一家を支配し、率先して殺人を行う一番悪い奴。
ルーダ・メイ・ヒューイット:トーマスの育ての母
トーマス・ブラウン・ヒューイット(アンドリュー・ブリニアースキー):ヒューイット家の殺人鬼。
モンティ・ヒューイット:トーマスの祖父。足を撃たれるがその治療と称して、チャーリー(ホイト)の指示でトーマスに両足を切られる。
〇 その他
ウィンストン・ホイト(ルー・テンプル):テキサスの保安官で彼が本物のホイト保安官。
ラッキー(マルクス・H・ネルソン):名前は出てこないが、変わり者として蔑まれていたトーマスに対して、唯一、人間として対等に優しく接していた人物、と思われる。
工場長(ティム・デ・ザーン):はっきりしたセリフは無い。しかしスローンを孕ませた本人と私は思ってる。
気になったところ。(個人的な解釈が多く入っています)
1、トーマスはそんなに醜くない。
生まれつきの顔の異常、皮膚病、変性疾患で顔面が変形…という設定なのに。
動物を解体した血だまりに映る少年の目は普通の子と違わない。
世間的には知的障害という設定のようだが…劇中の彼を見ると、もっと複雑な『感情の行き場を失った孤独』を感じる。
2、この悲惨な映画の中で一人だけ助かった男がいる。
閉鎖になった工場内でいつまでも肉を切り続けているトーマスに、工場主任と同僚は声を掛けた。主任は「化け物には用は無い、追い出すんだ」と冷たい。その役目を同僚の男に押し付ける。
「もう肉は出荷しない。動物は殺さないんだ」
初めは優しく声を掛けるが、一瞬耳を傾けるものの、また作業を始めてしまうトーマス。しまいには声を荒らげた。振り返って包丁を手に迫ってくる。が、二階にいる主任を見て包丁を取り落とす。一旦このシーンは終わるが、この男は助かったはずだ。
3、トーマスは、殺すべき男とそうではない男の選別が出来ていた。
発達障害のようなものがある風に描かれているが、育ての親への忠誠心があるようだ。同僚の男には危害を加えなかったことも、その分別はできていたと思われる。
4、冒頭の出産シーンの女性に関して
冒頭、汚く乱暴な工場の肉処理の中、女は綺麗にカットされたロース肉を丁寧に油紙で包んで検査済みのハンコを押す。丁寧過ぎる仕事。
彼女は妊娠していた。破水が始まり、歯を食いしばるように主任を見上げ、ほとんどの要求は通常許可されないかのように、悲痛な声で懇願する。虐げられた環境であることをうかがわせる。
それに対し、彼女を触り、覆いかぶさるように顔を近づけてのぞき込み、工場主任は「仕事中に酒なんか飲むからだ」と言う。この時点で、この男が彼女を搾取しているように見えた。自分の罪を被害者に転嫁し、彼女の自己責任として処理しようとする発言に見える。
5、そう考えると、トーマスが最初に殺害したのが、図らずも女を搾取し自分を産ませた、遺伝上の実の父親であるのではないかと思える。
6、工場が閉鎖され働く場を失い、それをきっかけに彼は殺人鬼へと舵を切ってしまった
―――――
こうして集めてくると……この映画、ただの残酷なホラーではない気がする。
これも私の個人的な、勝手な解釈で書くと。
・トーマスの生まれは本当に呪われていた。
年代なのか何なのか、個人的に女性への搾取には本当に虫唾が走る。この映画だけではなくて、少し前に書いた「リベンジャー 復讐のドレス」もそういう設定がある。
さっきも書いたように私はトーマスの瞳の澄み具合が気になっていた。殺人鬼の目はたいてい、充血していたりカッと見開かれていたり、、眉が無かったり、目自体を映さなかったり、そもそも感情が読み取れないことが多いけど、このトーマスの目は、何か悲しみをたたえた意思を持った人間の目に見えた。
単純に「ホラー映画の殺人鬼の目が怖くない」ということに気づいた人もいたかもしれない。しかし制作陣が一番わかっていたのではないか。なのにあえて時々目線を映すのはどうしてなのか…。
トーマスに秘密がありそうだ。最初に殺害したのが実の父親と考えられるのもある。
ただ出生の秘密を知っていたとは思えない。生まれた直後ごみ箱に捨てられて、それを漁っていたルーダ・メイ・ヒューイットに拾われたから。
同僚に「工場を出て家へ帰れ」と言われて手を止め、何を考えたんだろう?
殺されずに済んだその男はトーマスのことを「(出て行かないのは)ここが好きなんだろう」と言う。なぜそう思うのか。
工場内で対話があったのかもしれない。
これがもし、工場の閉鎖が無ければどうだったんだろう?殺人鬼にはならずに済んだのか?…。
………と、こうして若者が訪れ、地獄は始まった。
『テキサス・チェーンソー ビギニング』は単なるスプラッター映画だけはなく、一人の人間の「居場所」が奪われ、怪物が完成していくまでの悲劇のようにも思える。
最悪な環境で産み落とされ、最悪な家族に拾われ、唯一の理解者だったかもしれない同僚とも別れ……。
正直、前情報の通りのグロさ加減だったけど、変な勘繰りのせいであまり気にならなかった。最後まで観終わったとき、意外にも「悲しみ」がある?
それはきっと、地獄のような惨劇の合間に、トーマスの澄んだ瞳や、彼を人間として扱った同僚の言葉といった、ほんのわずかな「人間らしさ」の欠片が見えたから。
「本当の救い」なんてどこにもない物語。
でも、その「一筋の光」のようなものがあって、ギリギリこのシーンに耐えられと思う。
下に殺人鬼トーマスの俳優アンドリュー・ブリニアースキー(Andrew Bryniarski)のまめ知識があります
殺人鬼トーマスを演じたアンドリュー・ブリニアースキーについて(AI調べ)
元ボディビルダーであり、実は映画『ストリートファイター』のザンギエフ役だったことも!圧倒的な体格の持ち主ですが、素顔は大の動物好き。
あの印象的な「目」の演技について、彼は**「言葉を発せず顔も隠れているからこそ、すべての感情を瞳に込めた。彼はただの怪物ではなく、傷ついた子供なんだ」**と語っています。監督もその目力の強さを絶賛したのだとか。
「マスクで顔が隠れているから、感情を伝える手段は体格(動き)と、この『目』しかないんだ」と。また、彼は自分の役(トーマス/レザーフェイス)を単なる悪役とは考えておらず、「彼は、残酷な世界に翻弄されている**『巨大な子供(Big Baby)』**のようなものだ」と語ったらしい。
